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東京高等裁判所 平成8年(行ケ)123号 判決

アメリカ合衆国

マサチューセッツ州 メイナードパウダーミル ロード 111

原告

ディジタル イクイプメントコーポレーション

代表者

アーサー ダブリュー フィッシャー

訴訟代理人弁護士

中村稔

同弁理士

大塚文昭

同弁護士

熊倉禎男

同弁理士

今城俊夫

同弁護士

田中伸一郎

同弁護士

飯田圭

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 伊佐山建志

指定代理人

大橋隆夫

内藤照雄

井上雅夫

小池隆

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告のための付加期間を30日と定める。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

「特許庁が平成3年審判第7355号事件について平成8年2月5日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

2  被告

主文第1、2項と同旨の判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和58年5月6日、発明の名称を「コンピュータ相互接続のためのデュアル通路バス構造」(その後「コンピュータ回路網の複数のノード間で通信を行わせるバス構造」と訂正)とする発明(以下、「本願発明」という。)につき、1982年5月7日アメリカ合衆国においてした特許出願に基づく優先権を主張して特許出願(昭和58年特許願第79196号)をしたが、平成3年1月23日拒絶査定を受けたので、同年4月22日審判を請求した。特許庁は、この請求を平成3年審判第7355号事件として審理した結果、平成8年2月5日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年2月28日原告に送達された。

2  特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下「本願第1発明」という。)の要旨

ホストデバイスとこのホストデバイスをバスへ接続するインターフェースであるポートとをそれぞれが含んでいるコンピュータ回路網の複数のノード間で通信を行わせるバス構造において、

イ.前記のバスは第1のバス通路2Aと第2のバス通路2Bとを有し、これらのバス通路は相互に独立しており、前記のポート1は前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bとを使用するようになっており、そして

ロ.前記のポート1は、

ⅰ.前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bとのそれぞれに信号を送信する送信手段68A、68Bと、

ⅱ.前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bとのそれぞれから信号を受信する受信手段82A、82Bと、

ⅲ.前記のホストデバイスが送信したいということを示すホストデバイスからの信号に応答して、出ていく通信に使用するため前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bの一方を選択する通路選択手段10と、

ⅳ.前記の送信手段を可能化して、選択された前記の一方のバス通路だけで送信するため前記の通路選択手段に結合されている手段64、66A、66Bと、

ⅴ.前記の受信手段に結合され、前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bの一方における信号の存在を到来する通信の検出により検出する搬送波検出手段86A、86Bと、

ⅵ.この搬送波検出手段に応答して前記の到来する通信がのっている前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bの一方を、前記の到来する通信の開始において選択する手段88、84

を備えていることを特徴とするバス構造。(別紙2参照)

3  審決の理由

別紙1審決書写し(以下「審決書」という。)に記載のとおりである。

4  審決の認否

審決の理由1(本願第1発明の要旨等)は認める。

同2(引用例Aの記載事項の認定)のうち、8頁末行から9頁4行「を備えている」までは争い、その余は認める。

同3(一致点、相違点の認定)中、(1)のうち、本願第1発明の「インターフェースであるポート」、「搬送波検出手段86A、86B」がそれぞれ引用例Aに記載された発明の「局」、「検出器26、26’」に相当することは争い、その余は認める。(2)は争う。(3)のうち、本願第1発明の「コンピュータ回路網」が引用例Aに記載された発明の「通信回路網」と同義であることは認め、その余は争い、10頁3行ないし12頁15行のうち、11頁13行ないし20行「ように構成されている」ことは認め、その余は争う。

同4(相違点についての判断)は争う。

同5(まとめ)は争う。

5  審決の取消事由

審決は、本願第1発明と引用例Aに記載された発明との一致点の認定を誤り又は相違点を看過したため、進歩性の判断を誤ったものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。

(1)  取消事由1(バス構造の点)

審決は、本願第1発明の「バス構造」は、引用例Aに記載された発明の「データ通信装置」と同義であると認定し(審決書9頁末行ないし10頁2行)、両者は「バス構造」(同11頁10行)の点で一致すると認定するが、誤りである。

本願第1発明は「バス構造」そのものを発明の対象としているのに対し、引用例Aに記載された発明は、信頼性を高めるために、通信路を2系統にする冗長化が行われているデータ通信装置において、何らかの故障により通信システム全体が閉塞されることを防ぐために、通信が許容時間を越えた場合に局の送信又は受信を禁止する通信時間制限器を結合器の中に設けた点に基本的な特徴があり、その意味において、引用例Aに記載された発明は、「データ通信装置」の全体を発明の対象としているものである。

(2)  取消事由2(1個のポートの点)

審決は、本願第1発明の「インターフェースであるポート」は引用例Aに記載された発明の「局」に相当し(審決書9頁8行、9行、13行)、本願第1発明と引用例Aに記載された発明とは「前記のポートは前記の第1のバス通路と前記の第2のバス通路とを使用するようになって(いる)」点(同10頁10行ないし12行)で一致すると認定しているが、誤りである。

〈1〉 本願第1発明は、その特許請求の範囲イ項で、インターフェースであるポート1が相互に独立した第1のバス通路2Aと第2のバス通路Bとを使用するようになっていると規定し、1個の「ポート」が第1のバス通路及び第2のバス通路を使用する構成となっており(甲第3号証4頁14行ないし16行)、インターフェースの送信及び受信ロジック回路が2つのバス通路により共用されることを示している。

これに対し、引用例Aに記載された発明における「局」が1個のポートで構成されることを示す記載はない。かえって、線路4、4’は、それぞれを通して行われる通信を取り扱うための処理回路とソフトウェア、すなわち、本願第1発明にいう「ポート」をそれぞれ1つずつの合計2つ有するものであると考えられる。引用例A(甲第4号証)の第3図(別紙3参照)によれば、アンドゲート21、21’、22、22’、23、23’、24、24’、オアゲート25、25’、検出器26、26’、カウンタ27、27’RS、CS、CDの各端子が、線路4及び4’に対応するようにそれぞれ1つずつ設けられている。

〈2〉 被告は、上記の本願第1発明の構成について、引用例Aに示唆されている旨主張する。

しかしながら、引用例A中の原告指摘の箇所からは、N個の結合器を備えた「局」がN個の伝送路と1個の通信制御装置を結合していると解するのがむしろ自然である。

仮に、被告のいうように引用例Aにおける「局」がN個の結合器と1個の通信制御装置で構成されるとしても、結合器と通信制御装置で構成される「局」が「インターフェースであるポート」に相当するという根拠が示されていない以上、それが本願第1発明の「インターフェースであるポート」ということはできない。すなわち、引用例Aにおいてその旨の特別の記載のない限り、インターフェースが通信制御装置を構成部分として有していると結論することはできない。むしろ、通信制御はインターフェースに本来的な機能ではないから、そのような特別な記載のない限り、別個のものとして設けられていると考えるべきである。

(3)  取消事由3(送信の選択手段及び可能化手段の点)

審決は、「後者(引用例Aに記載された発明)は、・・・前者(本願第1発明)のごとき通路選択手段を備えているか否か明確でなく、したがってまた、送信手段を可能化する手段が、そのような通路選択手段に結合され、選択された一方のバス通路に信号を送信する送信手段を可能化するように構成されているのか不明である点」(審決書11頁20行ないし12頁8行)を相違点と認定する。

しかしながら、引用例Aに記載された発明には、1個のポートが線路4、4’を使用することの開示も示唆もないことから、引用例Aに記載された発明が、ホストデバイスからの信号に応答して、送信に使用するために、線路4、4’の一方を選択する通路選択手段を備えていないことは明らかである。

また、引用例Aには2重化伝送路の並列冗長化方式のデータ通信装置を発明の対象として記載していることが明らかであるから、引用例Aに記載された発明では、ポートは通路選択手段も、選択されたバス通路の一方のみに対応する送信手段の一方のみを可能化する手段も備えていないものである。

したがって、審決は、この点の相違点を看過したものである。

(4)  取消事由4(受信手段の点)

審決は、本願第1発明と引用例Aに記載された発明とは、前記のポートは、「ⅱ.前記の第1のバス通路と前記第2のバス通路とのそれぞれから信号を受信する受信手段」(審決書10頁17行ないし19行)を備えている点で一致すると認定するが、誤りである。

〈1〉 引用例Aに記載された発明には、前記のとおり、1個のポートが複数のバス通路を使用することが示されていないから、審決のこの点の認定は誤りである。

〈2〉 さらに、本願第1発明(別紙2参照)にいう「それぞれから信号を受信する」とは、受信手段82Aがバス通路2Aから、受信手段82Bがバス通路2Bから、それぞれ各別に信号を受信するという意味である。これに対し、引用例Aに記載された発明においては、受信手段がバス通路4、4’の双方から信号を受信している。このことは、「受信データ信号は線路4からアンドゲート22を経由し、結合器2’の側から受信信号をオアゲート5で合流してRD(Received Data)端子に加えられている」旨の記載(甲第4号証3欄42行ないし4欄1行)及び引用例A第3図(別紙3参照)の記載から明らかである。

(5)  取消事由5(受信の選択手段の点)

審決は、引用例Aに記載された発明の「局」は、「ⅳ.この検出器に応答して前記の到来する通信がのっている線路を、前記の到来する通信の開始においてそれぞれ選択するアンドゲート24、24’、22、22’」(審決書8頁末行ないし9頁3行)を備えており、本願第1発明の「搬送波検出手段86A、86B」は引用例Aに記載された発明の「検出器26、26’」に相当し(同9頁11行、12行、14行、15行)、本願第1発明と引用例Aに記載された発明とは、前記のポートは、「この搬送波検出手段に応答して前記の到来する通信がのっているバス通路を、前記の到来する通信の開始において選択する手段」(同11頁7行ないし9行)を備えている点で一致すると認定するが、誤りである。

〈1〉 引用例Aに記載された発明には、1個のポートが複数のバス通路を使用することが示されておらず、それ故、1個のポートにおいて受信を行う一方のバス通路を選択するという構成の開示は存在しないものである。

〈2〉 さらに、引用例Aに記載された発明では、受信の場合、キャリアが線路から入ると、検出器26のQ端子に出力が現れ、アンドゲート24を介して、アンドゲート22が可能化され、受信データ信号は、線路4からそのままアンドゲート22を経由し、RD(Received Data)端子で受信されるにすぎず、ここでは、「線路を」「選択する」という契機が全く存しないものである。

第3  請求の原因に対する認否及び反論

1  認否

請求の原因1ないし3は認め、同5は争う。審決の認定、判断は正当であり、原告主張の誤りはない。

2  反論

(1)  取消事由1(バス構造)について

本願第1発明に係るバス構造は、特許請求の範囲第1項の記載からみて、「バス」と「インターフェースであるポート」とを備え、複数のノード間で「通信」を行わせるためのものと解される。

他方、引用例Aに記載された発明は、審決認定のとおり、「線路」と「局」とを備え、複数のノード間で「通信」を行わせるための「データ通信装置」であり、本願第1発明の「バス」及び「インターフェースであるポート」は、それそれ、引用例Aに記載された発明の「線路」及び「局」に相当するものである。

したがって、本願第1発明にいう「バス構造」は、引用例Aに記載された発明の「データ通信装置」と実質的に同じものを意味しているものである。

(2)  相違点2(1個のポート)について

本願特許請求の範囲第1項には、送信及び受信ロジック回路の共用、バス通路の選択及び切替えのための具体的メカニズムの点を限定する記載はない。

引用例Aには、「第1図は本発明実施例の通信システム全体の構成図である。図で1は局本体、2および2’は結合器、………4および4’は線路である。各局毎に、局本体は結合器2もしくは2’を介して、線路4もしくは4’に結合されている。」(甲第4号証2欄22行ないし26行)と記載され、また、引用例A第3図(別紙3参照)において、RD端子及びSD端子につながる線が単一のものであるのは明らかであるから、引用例Aには、1個の局が2つの線路4、4’を使用するように構成されていることが示唆されているというべきである。

(3)  取消事由3(通信の選択手段及び可能化手段)について

原告主張の点は、審決においても相違点として挙げたものであり、この点につき、審決に相違点の看過はない。

(4)  取消事由4(受信手段)について

「ⅱ.前記の線路4と前記の線路4’とのそれぞれから信号を受信する受信手段」との審決認定の引用Aの記載事項(審決書8頁10行、11行)が、アンドゲート22、22’の前方で受信することを意味することは明白である。

(5)  取消事由5(受信の選択手段)について

審決が引用Aに記載された発明について使用した「選択する」なる語は、搬送波が検出された線路4、4’にのっている通信がゲート21、21’を通過するのを可能化するという意味である。

他方、本願第1発明における「選択する手段88、84」においても、「選択する」なる語は、搬送波が検出されたバス通路2A、2Bにのっている通信が(MPX)84を通過するのを可能化するということを意味しているにすぎない。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであって、書証の成立はいずれも当事者間に争いがない。

理由

1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(本願第1発明の要旨)及び同3(審決の理由)については、当事者間に争いがない。

そして、審決の理由2(引用例Aの記載事項の認定)は、前記の局は、「この検出器に応答して前記の到来する通信がのっている線路を、前記到来する通信の開始においてそれぞれ選択するアンドゲート24、24’、22、22’を備えている」点を除き、当事者間に争いがなく、同3(一致点、相違点の認定)は、(1)のうち前者(本願第1発明)の「インターフェースであるポート」、「搬送波検出手段86A、86B」はそれぞれ後者(引用例Aに記載された発明)の「局」、「検出器26、26’」に相当することを除く事実、及び、(3)のうち前者の「コンピュータ回路網」が後者の「通信回路網」と同義であるとの事実は、当事者間に争いがない。

2  原告主張の取消事由の当否について検討する。

(1)  取消事由1(バス構造)について

〈1〉  本願第1発明の要旨(特許請求の範囲第1項)には、「ホストデバイスとこのホストデバイスをバスへ接続するインターフェースであるポートとをそれぞれが含んでいるコンピユータ回路網の複数のノード間で通信を行わせるバス構造」と記載されており、さらに、甲第3号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、「「ポート」は「インターフェイス」或は「アダプタ」とも呼ばれ、これを通して(ホスト)コンピュータ或は他のデバイスが他のコンピュータ及びデバイスと通信するようにバスヘアクセスするメカニズムである。・・・「ノード」はホストコンピュータと少なくとも1つのポートとを備えている。・・・「バス」はデバイス間の相互接続であり、バスを通して1つのデバイスから他のデバイスへ情報を転送できる。・・・「回路網」は一つの共通のバスを介して相互接続されている一群のノードから成る。」(4頁14行ないし25行)と記載されていることが認められ、これらの記載によれば、本願第1発明に係る「バス構造」は、バスとインターフェースであるポートとを備え、複数のノード間で通信を行わせるためのものと認められる。

他方、甲第4号証によれば、引用例Aには、「計算機により制御される大型の制御システムや情報処理システムでは、システムの構成要素を分散配置するものが多くなっている。」(1欄33行ないし35行)、「「分散された構成要素に備えられ」た「局」は「通信のため」」(2欄7行、8行)であること、「第1図は本発明実施例の通信システム全体の構成図である。図で1は局本体・・・である。各局毎に、局本体は結合器2もしくは2’を介して、線路4もしくは4’に結合されている。」(2欄22行ないし26行)と記載されていることが認められる(一部は当事者間に争いがない。)。

引用例Aに記載された発明の「情報処理システムの構成要素」、「線路」が、それぞれ本願第1発明の「ホストデバイス」、「バス」に相当することは、当事者間に争いがなく、引用例Aに記載された発明における「局」がバスとインターフェースであるポートとを備え、複数のノード間で通信を行わせるためのものであり、本願第1発明における「インターフェースであるポート」に相当することは、後記(2)のとおりである。

〈2〉  そうすると、本願第1発明でいう「バス構造」は、引用例Aに記載された発明の「データ通信装置」と実質的に同じものを意味していると認められる。引用例Aに通信時間制限器を有する構成が記載されていることは、上記認定を左右するものではない。

〈3〉  したがって、本願第1発明の「バス構造」は、引用例Aに記載された発明の「データ通信装置」と同義であり、両者は「バス構造」の点で一致するとした審決の認定に誤りはなく、原告主張の取消事由1は理由がない。

(2)  取消事由2(1個のポート)について

〈1〉  前記認定の引用例A中の「第1図は本発明実施例の通信システム全体の構成図である。図で1は局本体・・・である。各局毎に、局本体は結合器2もしくは2’を介して、線路4もしくは4’に結合されている。」との記載及び引用例A第1図(別紙3参照)によれば、引用例Aに記載された発明においても、1個の「局」が2つの線路4、4’を使用していることが認められる。

そうすると、本願第1発明の「インターフェースであるポート」は引用例Aに記載された発明の「局」に相当し、本願第1発明と引用例Aに記載された発明とは「前記のポートは前記の第1のバス通路と前記の第2のバス通路とを使用するようになって(いる)」点で一致するとした審決の認定に誤りはない。

〈2〉  原告は、引用例Aの発明の詳細な説明における「図で1は局本体、2および2’は結合器、………4および4’は線路である。各局毎に、局本体は結合器2もしくは2’を介して、線路4もしくは4’に結合されている。」等との文言からは2個の結合器を備えた「局」が2個の伝送路と1個の通信制御装置を結合していると解するのがむしろ自然である旨主張するが、原告のこの点の主張は採用することができない。

さらに、原告は、仮に引用例Aにおける「局」が2個の結合器と1個の通信制御装置で構成されるとしても、結合器と通信制御装置で構成される「局」が「インターフェースであるポート」に相当するという特別の記載のない限り、インターフェースが通信制御装置を構成部分として有していると結論することはできない旨主張するが、前記認定の引用例A中の「計算機により制御される大型の制御システムや情報処理システムでは、システムの構成要素を分散配置する」、「「分散された構成要素に備えられ」た「局」は「通信のため」」であること、「各局毎に、局本体は結合器2もしくは2’を介して、線路4もしくは4’に結合されている。」との記載によれば、通信制御装置を構成部分とする「局」が「インターフェース」として機能することは明らかであるから、この点の原告の主張は採用することができない。

〈3〉  したがって、原告主張の取消事由2は理由がない。

(3)  取消事由3(送信の選択手段及び可能化手段)について

原告は、引用例Aに記載された発明が送信のため線路4、4’の一方を選択する通路選択手段を備えていないことは明らかであると主張して、審決の「後者(引用例Aに記載された発明)は、・・・前者(本願第1発明)のごとき通路選択手段を備えているか否か明確でなく、したがってまた、送信手段を可能化する手段が、そのような通路選択手段に結合され、選択された一方のバス通路に信号を送信する送信手段を可能化するように構成されているのか不明である点」との相違点の認定は誤りである旨主張するが、審決は、通路選択手段及び送信可能化手段の点を相違点として認定しているものであるから、審決が引用例Aに記載された発明が通路選択手段等を備えているか否か不明であると認定した点をもって相違点の看過があると認めることはできない。

したがって、原告主張の取消事由3は理由がない。

(4)  取消事由4(受信手段)について

〈1〉  原告は、引用例Aに記載された発明には1個のポートが複数のバス通路を使用することが示されていない旨主張するが、引用例Aに記載された発明が1個のポートが複数のバス通路を使用するものであることは、前記(2)に説示のとおりであるから、この点の原告の主張は理由がない。

〈2〉  さらに、原告は、引用例Aに記載された発明においては、受信手段がバス通路4、4’の双方から信号を受信している旨主張するが、引用例A第3図(甲第4号証。別紙3参照)によれば、アンドゲート22がバス通路4から、アンドゲート22’がバス通路4’からそれぞれ各別に信号を受信していることが認められ、この事実によれば、「ⅱ.前記の線路4と前記の線路4’とのそれぞれから信号を受信する」(審決書8頁10行、11行)ことが「アンドゲート22、22’」の前方で受信することを意味するものと認められるから、「それぞれから信号を受信する」ことの意味が本願第1発明と引用例Aに記載された発明とで異なっているとは認められず、この点の原告の主張は理由がない。

〈3〉  したがって、原告主張の取消事由4は理由がない。

(5)  取消事由5(受信の選択手段)について

〈1〉  原告は、引用例Aに記載された発明には1個のポートが複数のバス通路を使用することが示されていないことを前提に、1個のポートにおいて受信を行う一方のバス通路を選択するという構成の開示は存在しない旨主張するが、引用例Aに記載された発明は1個のポートが複数のバス通路を使用するものであることは、前記(2)に説示のとおりであるから、この点の原告の主張は理由がない。

〈2〉  さらに、原告は、引用例Aに記載された発明では、受信の場合、キャリアが線路から入ると、検出器26のQ端子に出力が現れ、アンドゲート24を介して、アンドゲート22が可能化され、受信データ信号は、線路4からそのままアンドゲート22を経由し、RD(Received Data)端子で受信されるにすぎず、ここでは、「線路を」「選択する」という契機が全く存しない旨主張する。

甲第3号証によれば、本願明細書には(別紙2参照)、受信器の説明として、「バス通路A及びB上の信号は、それぞれラインレシーバ82A及び82Bの一方によって検出され、増巾される。各ラインレシーバはマルチプレクサMPX84と搬送波検出器86A及び86Bとに接続されている。搬送波検出器は搬送波スイッチ88に接続されており、スイッチ88はMPX84を制御する。詳述すれば、搬送波スイッチ88は、処理が行なわれてつつある(即ち送信信号(搬送波)が検出された)バス通路に対応する入力をMPX84に選択させる。通路切替は送信の初めにだけ行なわれ、送信の途中では行なわれない。搬送波スイッチ88は裁定回路60も制御する。」(10頁12行ないし19行)と記載されていることが認められ、この記載によれば、本願第1発明における選択する手段88、84による「選択する」も、引用例Aに記載された発明と同様に、搬送波が検出されたバス通路2A、2Bにのっている通信がMPX84を通過するのを「可能化する」との意味を有するにすぎないことが認められるから、両者で「選択する」の意味に実質的な内容の違いはないものと認めれる。

そうすると、審決の「引用例Aに記載された発明の「局」は、「この検出器に応答して前記の到来する通信がのっている線路を、前記の到来する通信の開始においてそれぞれ選択するアンドゲート24、24’、22、22’」を備えていおり、本願第1発明の「搬送波検出手段86A、86B」は引用例Aに記載された発明の「検出器26、26’」に相当し、本願第1発明と引用例Aに記載された発明とは、前記のポートは、「この搬送波検出手段に応答して前記の到来する通信がのっているバス通路を、前記の到来する通信の開始において選択する手段」を備えている点で一致するとの認定に誤りはない。

〈3〉  なお、審決は、搬送波検出手段に応答して到来する通信がのっているバス通路を、到来する通信の開始において選択する手段が、本願第1発明では、到来する通信がのっている第1のバス通路と第2のバス通路の一方を選択するように構成されているのに対し、引用例Aに記載された発明では、単に到来する通信がのっている通路を選択するというにとどまる点を、両者の相違点として認定したうえ、二つのバス通路を備えるバス構造の制御形態をどのようなものにするかについては、引用例Aに記載された発明において交互切替方式を採用し、搬送波検出手段に応答して到来する通信がのっているバス通路を到来する通信の開始において選択する手段を、到来する通信がのっている二つのバス通路の一方を選択するようにすることは、当業者が容易に成し得たことと判断しており、この点に関する審決の認定、判断にも誤りはないと認められる。

〈4〉  したがって、原告主張の取消事由5は理由がない。

(6)  以上のとおり、審決に原告主張の一致点の認定の誤り又は相違点の看過はなく、したがって、審決の相違点についての判断にも違法な点は認められない。

その他、審決の認定、判断を違法とすべき点は認められない。

3  よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担及び付加期間の定めについて行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、96条2項を適用して、主文のとおり判決する(平成10年6月9日口頭弁論終結)。

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 濵崎浩一 裁判官 市川正巳)

平成3年審判第7355号

審決

アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 メイナード メイン ストリート 146

請求人 ディジタル イクイプメント コーポレーション

東京都千代田区丸の内3丁目3番1号 新東京ビル 中村合同特許法律事務所

代理人弁理士 中村稔

東京都千代田区丸の内3丁目3番1号 新東京ビル 中村合同特許法律事務所

代理人弁理士 串岡八郎

東京都千代田区丸の内3丁目3番1号 新東京ビル 中村合同特許法律事務所

代理人弁理士 大塚文昭

東京都千代田区丸の内3丁目3番1号 新東京ビル 中村合同特許法律事務所

代理人弁理士 宍戸嘉一

昭和58年特許願 第79196号「コンピュータ回路網の複数のノード間で通信さ行わせるバス構造」拒絶査定に対する審判事件(昭和59年3月7日出願公開、特開昭59-41031)について、次のとおり審決する.

結論

本件審判の請求は、成り立たない.

理由

1.本願は、西暦1982年(昭和57年)5月7日に米国においてした特許出願に基づいてパリ条約第4条の規定による優先権を主張した昭和58年5月6日の出願であって、その発明の要旨は、平成7年4月7日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲第1項及び第3項に記載された「バス構造」であると認められるところ、その第1項に記載された発明(以下、「本願第1発明」という。)は次のとおりである。

「ホストデバイスとこのホストデバイスをバスへ接続するインターフェースであるポートとをそれぞれが含んでいるコンピュータ回路網の複数のノード間で通信を行わせるバス構造において、

イ.前記のバスは第1のバス通路2Aと第2のバス通路2Bとを有し、これらのバス通路は相互に独立しており、前記のポート1は前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bとを使用するようになっており、そして

ロ.前記のポート1は、

ⅰ.前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bとのそれぞれに信号を送信する送信手段68A、68Bと、

ⅱ.前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bとのそれぞれから信号を受信する受信手段82A、82Bと、

ⅲ.前記のホストデバイスが送信したいということを示すホストデバイスからの信号に応答して、出ていく通信に使用するため前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bの一方を選択する通路選択手段10と、

ⅳ.前記の送信手段を可能化して、選択された前記の一方のバス通路だけで送信するため前記の通路選択手段に結合されている手段64、66A、66Bと、

ⅴ.前記の受信手段に結合され、前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bの一方における信号の存在を到来する通信の検出により検出する搬送波検出手段86A、86Bと、

ⅵ.この搬送波検出手段に応答して前記の到来する通信がのっている前記の第1のバス通路2Aと前記の第2のバス通路2Bの一方を、前記の到来する通信の開始において選択する手段88、84

を備えていることを特徴とするバス構造」

2.一方、当審において合議の結果平成6年9月26日付けで通知した拒絶理由に引用した特公昭53-16246号公報(昭和53年5月31日公告、以下、「引用例A」という。)には、信頼性を高めることを目的とする「冗長化されたデータ通信装置」が記載されており、これについて次の事項が記載されている。

(1)「情報処理システムでは、システムの構成要素を分散配置するものが多くなっている。………従ってシステム構成要素間を結合する通信手段がシステムの集中部分となる為、通信手段の信頼性に対する要求が大きくなる。信頼性向上の方法としては通信路を2系統にする………などの冗長化が行なわれている。」(前記公報第1欄第34行~第2欄第6行)

(2)「第1図は本発明実施例の通信システム全体の構成図である。図で1は局本体、2および2'は結合器、………4および4'は線路である。各局毎に、局本体は結合器2もしくは2'を介して、線路4もしくは4'に結合されている。」(同公報第2欄第22行~第26行)

(3)「第3図により結合器2の具体的な構成例を説明する。………結合器2および2'の構成および動作は同一であるから、結合器2のみを説明する。送信データ信号SDはアンドゲート21を経由して線路4に結合されている。また受信データ信号は線路4からアンドゲート22を経由し、結合器2'の側からの受信信号とオアゲート5で合流してRD(Received Data)端子に加えられている。………送信の場合には、まづ本体1のRS端子(Request to Send)から送信要求信号が出る。………つづいてSD端子に送信キャリアが出ると、線路4に送信されると同時に検出器26でキャリアが検出され、検出器26のQ端子に出力が現われ、………検出器26の出力Qはアンドゲート24を介してCD(Carrier Detect)、およびさらにアンドゲート23を通して、CS(Clear to Send)を送り送信可能を知らせる。………第3図において受信の場合は、線路4からキャリアが入ると、検出器26のQ端子に出力が出て………CD(Carrier Detect)が本体1に送られ、受信状態に入り、データ信号をRD端子で受ける。」(同公報第3欄第33行~第4欄第29行)

また、第3図から、次の事項が読み取れる。

(4)局本体1の2つのRS端子がそれぞれアンドゲート21、21’の入力端子に接続されているから、前記2つのRS端子から送信要求信号が出されると、それぞれアンドゲート21、21’が可能化されること

(5)アンドゲート24、24’の出力端子がそれぞれアンドゲート22、22’の入力端子に接続されているから、検出器26、26’のQ端子に出力が現われると、それぞれアンドゲート24、24’を介してアンドゲート22、22’が可能化されること

そして、前記引用例Aに記載されたものについて、更に次の事項が認められる。

(6)情報処理システムの分散配置された各構成要素は、各局に接続され、該局を介してシステムの他の構成要素と通信すること

(7)各局は、それぞれ、局本体1と結合器2、2'からなること

(8)『送信したいということを示す信号』が情報処理システムの構成要素から局本体1に出されること、したがってまた、局本体1から出される送信要求信号は、前記『送信したいということを示す信号』に応答して出されること

(9)いわゆる’『通信回路網』に関するものであること

(10)『通信回路網』において、情報処理システムの構成要素とこの情報処理システムの構成要素を線路に接続する局とからなるものは、一般に「ノード」と称されること

(11)線路4と線路4'とは相互に独立していること

(12)局は、線路4と線路4'とのそれぞれから信号を受信するための手段を備えるものであること

以上のことから、引用例Aには、次の発明が記載されているものと認められる。

「情報処理システムの構成要素とこの情報処理システムの構成要素を線路に接続する局とをそれぞれが含んでいる通信回路網の複数のノード間で通信を行わせるデータ通信装置において、

イ.前記の線路は線路4と線路4'とを有し、これらの線路は相互に独立しており、前記の局は前記の線路4と前記の線路4'とを使用するようになっており、そして

ロ.前記の局は、

ⅰ.前記の線路4と前記の線路4'とのそれぞれに信号を送信するアンドゲート21、21’と、

ⅱ.前記の線路4と前記の線路4'とのそれぞれから信号を受信する受信手段と、

ⅳ.前記の情報処理システムの構成要素が送信したいということを示す情報処理システムの構成要素からの信号に応答して、前記のアンドゲート21、21’をそれぞれ可能化する手段と、

ⅴ.前記の受信手段に結合され、前記の線路4と線路4'における信号の存在を到来する通信の検出によりそれぞれ検出する検出器26、26’と、

ⅵ.この検出器に応答して前記の到来する通信がのっている線路を、前記の到来する通信の開始においてそれぞれ選択するアンドゲート24、24’、22、22’

を備えているデータ通信装置」

3. 本願第1発明(以下、「前者」という。)と引用例Aに記載された発明(以下、「後者」という。)とを比較する。

(1)前者の「ホストデバイス」、「バス」、「インターフェースであるポート」、「第1のバス通路2A」、「第2のバス通路2B」、「送信手段68A、68B」及び「搬送波検出手段86A、86B」は、それぞれ、後者の「情報処理システムの構成要素」、「線路」、「局」、「線路4」、「線路4'」、「アンドゲート21、21’」及び「検出器26、26’」に相当する。

(2)前者の「送信手段を可能化する手段64、66A、66B」及び「手段88、84」は、それぞれ、後者の「アンドゲート21、21’を可能化する手段」及び「アンドゲート24、24’、22、22’」に対応付けられる。

(3)前者の「コンピュータ回路網」及び「バス構造」は、それぞれ、後者の「通信回路網」及び「データ通信装置」と同義であると認められる。

よって、両者は、実質的に、

「ホストデバイスとこのホストデバイスをバスへ接続するインターフェースであるポートとをそれぞれが含んでいるコンピュータ回路網の複数のノード間で通信を行わせるバス構造において、

イ.前記のバスは第1のバス通路と第2のバス通路とを有し、これらのバス通路は相互に独立しており、前記のポートは前記の第1のバス通路と前記の第2のバス通路とを使用するようになっており、そして

ロ.前記のポートは、

ⅰ.前記の第1のバス通路と前記の第2のバス通路とのそれぞれに信号を送信する送信手段と、

ⅱ.前記の第1のバス通路と前記の第2のバス通路とのそれぞれから信号を受信する受信手段と、

ⅳ.前記のホストデバイスが送信したいということを示すホストデバイスからの信号に応答して、出ていく通信に使用するため前記の送信手段を可能化する手段と、

ⅴ.前記の受信手段に結合され、前記の第1のバス通路と前記の第2のバス通路における信号の存在を到来する通信の検出によりそれぞれ検出する搬送波検出手段と、

ⅵ.この搬送波検出手段に応答して前記の到来する通信がのっているバス通路を、前記の到来する通信の開始において選択する手段

を備えているバス構造」

である点で一致し、次の2点で相違する。

〈相違点〉

a. 前者は、ホストデバイスが送信したいということを示すホストデバイスからの信号に応答して、出ていく通信に使用するため第1のバス通路と第2のバス通路の一方を選択する通路選択手段を備えると共に、送信手段を可能化する手段が、該通路選択手段に結合され、選択された前記の一方のバス通路に信号を送信する送信手段を可能化するように構成されているのに対し、後者は、ホストデバィスが送信したいということを示すホストデバイスからの信号に応答して、出ていく通信に使用するため送信手段を可能化する手段を備えてはいるが、前者のごとき通路選択手段を備えているか否か明確でなく、したがってまた、送信手段を可能化する手段が、そのような通路選択手段に結合され、選択された一方のバス通路に信号を送信する送信手段を可能化するように構成されているのか否か不明である点

b. 搬送波検出手段に応答して到来する通信がのっているバス通路を、前記の到来する通信の開始において選択する手段が、前者では、到来する通信がのっている第1のバス通路と第2のバス通路の一方を選択するように構成されているのに対し、後者では、単に、到来する通信がのっているバス通路を選択するというに留まる点

4. 前記相違点について検討する。

(1)相違点aについて

この点の相違は、煎じ詰めれば、2つのバス通路を備えるバス構造が、前者では、前記2つのバス通路のいずれか一方を選択するように構成されているのに対し、後者では、前記2つのバス通路をどのように選択するのか明確でない点の差異に帰着すると認められるところ、この技術分野においては、2つのバス通路を備えるバス構造の制御形態として、『並列冗長方式』、『交互切替方式』或いは『待機方式』等の種々の方式が当業者に周知であるから、後者において、前記『交互切替方式』を採用し、2つのバス通路のいずれか一方を選択するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

そして、前記『交互切替方式』を採用し、2つのバス通路のいずれか一方を選択するように構成した場合、そのための選択手段を設けなければならないことは自明のことであり、また、そのような選択手段を設けた場合、後者において、送信手段を可能化する手段を、前記選択手段に結合すると共に、選択された一方のバス通路に信号を送信する送信手段を可能化するように構成することは、当業者ならば容易に成し得たことと認められる。

したがって、この点の相違は、格別のものではない。

(2)相違点bについて

この点の相違は、2つのバス通路を備えるバス構造の制御形態をどのようなものにするかに起因するものと認められるところ、先記相違点aについて述べたことから知れるように、後者において、『交互切替方式』を採用することは、当業者が容易に想到し得たことと認められ、また、該『交互切替方式』を採用した場合は、2つのバス通路のうちのいずれか一方にしか通信がのってこないのであるから、後者において、搬送波検出手段に応答して到来する通信がのっているバス通路を前記の到来する通信の開始において選択する手段を、到来する通信がのっている2つのバス通路の一方を選択するようにすることは、当業者ならば、容易に成し得たことと言わざるを得ない。

したがって、この点の相違も、格別のものではない。

5. 以上のとおりであって、各相違点はいずれも格別のものとは認められず、また、それらを組み合わせても格別の作用効果が生じるとも認められないから、本願第1発明は、前記引用例Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、特許請求の範囲第3項に記載された発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

平成8年2月5日

審判長 特許庁審判官

特許庁審判官

特許庁審判官

別紙2

本願第1発明

〈省略〉

別紙3

引用例A

〈省略〉

〈省略〉

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